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下流老人問題を憂える

木内里美(株式会社オラン代表取締役)

現実味帯びるこれからの高齢社会をどうする?

下流老人という言葉が流行語大賞の候補にノミネートされるなど、俄かに注目を集めている。NPO法人ほっとプラスという生活困窮者の支援活動をしている団体の代表理事である藤田孝典氏の造語である。
藤田氏の著書によれば、下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と定義しており、収入が少なく、十分な貯蓄もなく、頼れる人間がいない孤立状態を特徴とするあらゆるセーフティネットを失った状態と表現している。そして何より、その実態が既にじわじわと進行していることを指摘しているのだ。実感として困窮した老人に関わる様々な事件が目立つようになってきている。
困窮の事例には備えてこなかった自己責任や努力不足を問う声も小さくはないが、単純にそれだけでは解決しない。起こっている現実を考えれば、世代共倒れやさらなる少子化への影響も考えられる社会構造の問題だとの指摘ももっともである。孤立した貧困老人からの下流転落、核社会が進み子供が老親を養えない現実、一億総活躍社会とは対極にあるのが下流老人問題ではなかろうか?

高齢者の生活は労働からの収入は2割以下のようで、ほとんどが公的年金や恩給に依存しているそうだ。しかし年金で食べられる高齢者は稀で貯蓄の取り崩しで補填して賄う。年々増加傾向の生活保護受給者の49%以上は65歳以上の高齢者という現実。
藤田氏は下流化するパターンを分析し整理し予防への足掛かりを示している。そこにある要因は高額な医療や介護費の問題であり、非正規雇用の割合が増え続けている労働市場で子供がワーキングプアになったりブラック企業でメンタルを病んだりして老親が子供を支えなければならない問題であり、熟年離婚による孤立と収入減であり、認知症を患い悪徳業者の詐欺の災禍に見舞われることなどである。総中流だった日本ではいつしか富裕層と貧困層の二極化が進んでいる。
筆者は2030年以降に急速に減少が予測される生産労働人口と65歳以上の高齢者層の厚さを考えた時、衰退する日本をどう支えていけば良いのかをしばしば考えている。思考を巡らせても行き着く結論はいつも同じ。将来を託す若者や子供達をその環境に立ち向かえるように人づくりをするしかない。その仕組みをなんとか作れないかと社会活動をしながら模索の日々である。結局、社会システムを是正できるのは意識高く行動力のある「人」である。

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