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株式会社安川電機 代表取締役社長 津田純嗣氏

株式会社安川電機 代表取締役社長 津田純嗣氏

「ロボット作りでは絶対に負けない」

「中国のロボット導入による生産技術力が上がってきている。このまま行くとロボット革命は中国が先行する可能性が高い」と語る津田社長に、中国市場の実情を聞いた

当社ロボット事業の海外売上高比率は80%を超えている。日本企業の海外進出を含めると85%はいく。その中で、中国向けが約25%と徐々に売上高比率を上げてきている。
中国で今ロボットブームになりつつある要因はいくつかある。1つめは、大量生産をする素材系の工場規模が日本の10倍以上と大きく、ロボットを導入する場所がいくらでもあること。 2つめは、重いものを運ぶなど簡単なアプリケーションで、ロボットを24時間働かせることができる作業領域が無尽蔵にあること。3つめは、企業家における工場労働者の人手不足感への危機感が強いことである。従来なら一工場に1~5万人の労働者がすぐに集まったが、5年後に1万人を集めることは非常に難しいとみている。そこでロボット導入のある意味ブームが起きてきている。
なお、ロボットを導入するには生産技術に詳しい多くのエンジニアが必要だが、中国はそのニーズも十分満たしている。年間約700万人いる大学卒業者のうち、その約半分が理系である。彼らがロボット導入のためのエンジニアとなって、不足する労働者不足を補おうと必死になっている。日本と比べると、技術レベルはまだ低いが、ロボット導入加速の環境は揃っている。
加えて、中国政府は「中国製造2025」の中で、産業の高度化のためにロボット導入の文言を入れ、各地方政府もロボット化に対し補助金を出している。地方に寄ってマチマチだが、かなり大きな補助が受けられる。
その反面、SI(システムインテグレーション)のできるエンジニアは育てていかないとロボット化は進まないが、当社の現地駐在員に聞くと「中国のSIerは3年前とくらべ倍増している」とのこと。スピード感がまったく日本と違う。このまま行くと「ロボット革命」は日本より先に中国ということになりかねない。もちろん、日本の自動車メーカーなど生産規模が大きな企業は生産技術を手の内に持ち大丈夫だが、そうではない中小企業や農業などは効率化・集約化、そして大規模化をしていかないと、ますます遅れてしまう可能性が高い。
中国政府はこれから量的拡大から質的改善にシフトし始めているのでGDPは下がっていくだろが、工場の生産性はこのまま進めば日本を凌ぐ産業が出てくる可能性は否めない。当社の製品においては、中国でも部品加工や製品組立てを行っているが、中国のどのメーカーよりも生産性で凌ぐことをキーワードにしている。
技術的には、ハードは真似される危険はあるが、ソフトはブラックボックス化して盗まれないような工夫をしている。例えば、ASICにしたり、鍵を掛けたり、コピーしたら誤動作するような対策を行っている。
今後、ロボットを使う生産技術で中国は進歩していくだろうが、ロボットを作る技術では日本は絶対に負けないし、自動車メーカーを中心に生産技術力も世界を圧倒し、ロボットを使う技術も最高レベルを誇る。しかし、このようなグローバル企業は問題ないが、問題は中小企業。日本のものづくりを支える中小企業への力強い支援が必要不可欠である。
ロボットでイノベーションを起こすためには、社会がロボットを使えるような仕組みにしないとイノベーションは起こらない。政府には「ものづくり日本」を維持するためにも、アグレッシブな支援・指導をして欲しいと切望する。

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