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「ハイブリッド起業のすすめ」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

安倍政権の「骨太の方針2014」では、日本を「起業大国」にすることがうたわれている。
起業する比率が上がったら社会としてハッピーかどうかはさておいて、たしかに日本の起業率は他国に比べて低い。OECDの統計によると、1990年から2008年までの開業率は0.04で、米国0.10、ドイツ0.17、シンガポール0.18よりもはるかに低い。
サラリーマンの立場で考えると、起業に関心はあってもリスクが高いから、安定収入を捨てるのは勇気がいる。このリスクを軽減する考え方としてハイブリッド起業がある。ハイブリッド起業とは、「会社勤めを続けながら、それと並行して起業すること」、要するに「副業として起業する」ことだ。
起業というと「会社を辞めて起業するか、辞めずに起業をあきらめるか」の二者択一と思われがちだが、世界的にみると、ハイブリッド起業はきわめて一般的な形態になりつつある。
日本においては現実に会社が副業を認めるのはそう簡単ではないが、法的には「職業選択の自由」の観点で認められているから、今後は徐々に増えてくるのではないだろうか。
もちろん、副業のために遅刻や欠勤が増える、違法な副業で会社の品位が落ちるなどがあってはならないし、ライバル企業でのアルバイトや、会社のイメージを傷つけるような職種など会社に損害を与える可能性がある場合は、企業が社員の副業に制限を加えるのは当然だ。
ハイブリッド起業のもう一つのメリットは、一度ハイブリッドを経由した方が、フルタイム起業への移行率が高くなることである。ある研究によると、一般企業に勤めていていきなりフルタイム起業家に移行する率は0.7%に過ぎないが、ハイブリッド起業している人が翌年フルタイム起業に移行する率は8.5%にのぼるそうだ。つまり、ハイブリッドからフルタイム起業への移行確率は、直接フルタイム起業する確率より格段に高い。
当然ハイブリッド起業から会社の仕事に専念に戻る人もいるわけで、要は、「会社の仕事に専念」「ハイブリッド起業」「フルタイム起業」というような様々な働き方の間を柔軟に移行できることになる。
もちろん学生や若い人の起業も素晴らしいが、経験を積んだビジネスパーソンの能力も魅力的だ。事業環境の変化が激しい時代では、こういう能力が会社でフルに活用されていないケースが散見され、もったいない話だ。
こういう方々の起業がもっと活性化すれば、その会社、ひいては日本全体にとって大きなメリットがある。
 

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