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「原則OKの社会」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

サントリーは創業110年以上の老舗であるが、常にベンチャースピリッツを失わない。その源泉は、創業者鳥井信治郎が日常口にしていたと言われる「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」精神にあると思う。
それだけでなく、「失敗してもいいじゃないか」「俺がその骨を拾ってやる」と言っていたというから、実に立派なものだ。一方で「自ら先頭に立ち、必死の覚悟でやれ」と督励したそうだ。
DeNAの南場智子氏によると、インターネットサービスを開発する場合、ある程度のところまではマーケットに投入することを優先し、判断を経営者ではなくマーケットに委ねているそうだ。会社のパーミッション(許可)が不要だから、パーミッション・レス型と言っている。
この2社を取り上げたのは、ほとんどすべての会社が2社のようになってないからだ。つまり、過去の事例に学んで規則を積み上げ、「石橋を叩いて、最後は叩き割る」たぐいの経営を行っている。「いつも結論はやめましょう」だ。
これでは「白タクがまかり通る」Uberや「宿泊業を潰しかねない」Airbnbは絶対に生み出されない。
戦後の日本は世界史でも珍しい高度成長を成しとげた。国民の努力もあるが、人口の増加、冷戦構造などの客観情勢にも恵まれた。結果として、「真面目に規則を守ること」が重要視された。このために、社会や会社のルールが「原則禁止」になっている。「やっていいことはこのリスト(このリストをホワイトリストという)の通りです。その他は禁止」。社会全体が右肩上がりの場合に適した考え方だ。特に工場を安心・安全に運営するにはぴったりだ。
一方、社会が右肩下がりで、現状を打破するイノベーションが求められる場合には、「このリスト(ブラックリスト)に書いてあることはダメですが、他はすべてOKです」という「原則OK」の考え方が必要だ。ともかくやってみて問題が出てくれば、リストを整備すればよい。UberやAirbnbはこういう考え方から創出された。
筆者もかなりの高齢者に属するが、高齢者の特徴は多様な経験が災いして、何事にも先回りして心配することだ。どこの会社にも優秀な人材はいるが、心配症の経営者や上司の下ではせっかくのアイデアも潰されかねない。
だからサントリーのように、トップが自ら「やってみなはれ」宣言をしなければならない。逆にいうと、これができればその会社の将来は明るい。さらに社会全体が「原則OK」になれば現下の逼塞状況も打破できるのではないだろうか。

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