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箱ものIT時代の終焉

有賀貞一視察団長

有賀貞一視察団長

先般大学の講義で、仮想化のもたらすインパクトについて話した。1961年、ジョン・マッカーシーが MIT100周年記念式典でのスピーチで、「タイムシェアリングシステムの技術によって(水道や電力のように)コンピュータの能力や特定のアプリケーションを販売するビジネスモデルを生み出すかもしれない」と述べてから55年たった。

すでに数年以上前から、仮想化を活用したクラウド化=ユーティリティ化が確実に進展して生きているのは、周知のとおりである。約50年間の技術進歩により、ジョン・マッカーシーの予言は、現実のものとなってきているのだ。

この『コンピュータ・ユーティリティ』という考え方は1960年代後半には非常に人気となったが、当時はハードウェア、ソフトウェア、通信技術すべて未熟であったために1970年代中ごろには消えていった。1967年10月に行われた日本生産性本部の「訪米MIS調査団」の報告書に、これからの電子計算機利用は「ユーティリティ化」していくということが述べられていた。我々の先達は、当時の米国での最先端概念「コンピュータ・ユーティリティ」を聞いて、電気、ガス、水道のようにコンピューティング・パワーを自由に使える日が来ることを夢見た。

そして現実にクラウドの世界が実現し、AWSやAZUREが常識の世界になってきた。この動きをもたらしているのが、仮想化技術である。CPUパワー(サーバ)はもちろんのこと、ストーレッジから、本来ユーティリティであるはずのネットワーク利用までもが、SDxx(Software Defined xx)としてさらなる高度な仮想化が行われるところまできた。

仮想化のもたらす効果としては、次のような点があげられる。リソースの有効利用(従来では低負荷時に大量に余りがちだったCPU処理能力やメモリといったサーバリソースを、複数のOSで分配し有効に活用できる)、省コスト・省エネルギー(物理サーバ運用台数の大幅減少により、消費電力・設置スペース・管理リソースといった様々な側面でコスト削減を実現)、高い柔軟性(サーバが物理的な制約から逃れ、仮想マシン上で稼働することで、多台数の一元管理、サーバ立ち上げの高速化、ダウンタイムの最小化)、等々。

しかし、これら項目すべてが示しているのは、サーバや、ストーレッジ装置、さらにはネットワーク機器、というこれまでのIT産業を支えてきた「箱もの」の「台数減少」である。

近年、かつてサーバやネットワーク機器を生産していた大手IT企業(IBM、富士通、日立、HP等)が、まったく元気を失ってきた最大の原因がここにある。EMCというよりその傘下の仮想化の旗手VMwareやセキュリティ関係企業群がほしかったDELLは、その買収によって、見事に立ち直ってきたことが、この業界構造の大変革と生き延びる方向の一例を示している。

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