政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


☆連載3回目
「日本のものづくりにソフトウェアの視点を」

( 1691号からのつづき)<これまでの議論>いまや自動車の製造さえもソフ トウェア開発ツール(モデルベ ース)が主流になっている。欧米ではとっくにソフトウェアの価値・重要性に気づき、知財マ ネジメント戦略を駆使して、世界市場を抑える競争をしてい る。

覆面座談会「日本のものづくりと組込みソフトウェアの将来は?」
(出席者)*司会本紙主幹
     A:大学で競争戦略とものづくりを研究する研究者
     B:元大手電機メーカー組込み開発リーダー
     C:ソフトウェア商社システム研究部長

経営の中枢にソフト人財がいないのが問題

ものづくりと組込みソフトウェアの将来

A モデルベースなど、いわゆる製造業におけるソフトウェアの重要性を主張し続けてきた人々には、非常に先鋭的で有能な方が多い。しかし製造業におけるソフトウェアあるいは組み込みソフトの位置付けが軽視されているために、そして先鋭的であるがゆえに、有能な人であってもなかなか社内で認めてもらえない。そして企業のメインストリームから外れてしまう。
 優秀なソフトウェア人材は企業の中にたくさんいるのに、彼らが前面に出れるような企業組織になっていない。ここが問題だ。こんな状況では、ソフトウェア人財は常に軽視される。先鋭的な人々が経営の中枢に入り込めないかぎり、日本の製造業におけるソフトウェアを事業戦略に正しく位置付けることができない。
 一方、ソフトウェア人財にも問題がある。ハードウェア的なモノづくりと同じ思想でプログラミングの時間や品質改善を語る人は多いが、ビジネスモデルや知財マネジメント、さらにはこれらを駆使したビジネスの仕組み作りという視点から組込みソフトを語る人がいない。
B T社には技術者の封建階級制度があるみたいなもので士農工商メカ・エレキ、そして、一番下がソフトウェアだそうです。
A たとえ自動車であっても、燃費規制や環境規制が厳しくなった1990年代末から、自動車開発で組込みソフトの比率が急増している。ハイブリッド車では開発工数の40%がソフトウェアになったと言われています。
 1980年代からクルマの設計にCAD/CAMEが多様されるようになり、開発工数が非常に短縮されている。フィルクスワーゲンンのModule Kit Strategyや日産のCommon Module Familyでは開発期間が二分の一から三分の一に激減したと言われるが、その背後にあるのがCAD/CAMEソフトを大規模に活用する自動車設計である。
Bしかし、ハイブリッドはソフトウェア的にはぐちゃぐちゃだったそうです。量産化、横展開するときに子会社のD社が大変だったそうです。実験しながら作ったソフトウェアだから、最初はシンプルだった訳ですが、動かないため、継ぎ足し継ぎ足ししながら、ようやく動かしたそうです。「それほどは売れない」と思っていたので、量産用には書き換えしなかったとも聞いてます。
A 初期の頃はハードウェアと開発しながらソフトウェアを試行錯誤で開発していたので仕方のない面もある。
B また下にはD社のように、直ぐきれいにしてくれるソフト屋さんが控えていますからね。
A 一般に日本企業は、ソフト活用の製品設計であっても独自のやり方で開発するクローズな企業が多い。
C 逆にMACと似ていますよね
B T社には「われわれは田舎者ですから」とよく言われます。

欧米はソフトの知財マネジメント重視 A
日本の特許は「ノルマ」のため役に立たない B
日本にはソフトの「特許戦略」が元々ない C

A いまやソフトウェアの知財マネジメントが非常に大事になってきている。アップルやアドビは、もとよりスマートフォン市場を背後でコントロールするクアルコムも、知財戦略をしっかりやっているから強い。
そもそも先進国では、製品技術が国境を越えない仕組みを知財マネジメントで構築しないと、先進国製造業が成立しない。
 1980年代から1990年代の日米の技術衝突や現在の日本とアジア諸国の技術漏洩問題を調べると、皆行き着くところは知財マネジメント問題に行き着く。ソフトウェアに絡む著作権や特許権がハードウェアとつながった時の権利行使についてなどで日本は古典的な知財マネジメントに終始している。特にアジア諸国との知財マネジメントが稚拙であり、結果的に技術が瞬時に国境を超える現実へ対応できていない。
 日本では、特許法の第1条に「自然法則を使ったものを発明とみなす」と書かれている。しかし、ソフトウェアは自然法則でなく、人間が勝手に作った論理体系。日本の特許法はソフトウェアの本質と矛盾する。これが今でも放置されてソフトウェアの出願・知財審査・登録が進められている。
B 近年は、ソフトウェアで作ったシステムやソフトウェアを前提としたアルゴリズムなども特許として認められるようになってきています。
C 私は計測器を開発して、上手に売って儲けていた時代があり、特許を出していました。開発メンバーが作ったパネルの計測表示は斬新だったので特許申請を考えました。しかしパネルの動作の仕方は自然法則でないので、特許を出すかどうかで迷った時があった。業界的に特許を出して戦略にのせようという雰囲気もいまだ少ない。いまソフトウェアの特許が認められてきたが、日本が強いどうかは疑問だ。
A 日本が強いハードウェアのものづくりとリンクさせた形でソフトウェアをつなげれば、お互い価値が出る。そこをしっかりやるべきだろう。そこには知財がからむ。
 例えば、アドビにはハードウェアは持っていないのに、ソフトウェアの知財マネジメントのエッセンスはぎっしり詰まっている。あれだけ全て公開して、なぜアドビだけが独占できるのか?
 アップルは年間、100-200件しか特許を登録していないのに、完全に市場をコントロールできている。液晶TVのS社や家電のP社が年間、数千件も特許を題しているのに負けているのはなぜか。
B 日本の特許出願と言うのは技術者の「ノルマ」です。T社にいた時は、新人時代から「年に2件は特許を出願しなさい」と言われた。要するに、新人の書いた特許なんてビジネスに役立つわけがない。重箱の隅をつついて、空いているところの技術の特許を出していたので意味がない。
 米国はそんな特許は出していない。本当に価値のある、発想力のあるものを出してくるから、年200件は全て武器になるが、日本は1万件出していても95%は「ノルマ」特許なので、戦力にならない。

A 一般にこれまでの特許の出願公開は技術伝播と同じです。したがって特許をたくさん出すことは技術漏洩をしていること同じ。それでもソフトウェアは、特許法第一条の件は別として、オープン&クローズの視点で知財マネジメントを考えれば意外と守りやすい。著作権でも特許権でも守れる。
 この意味でソフトウェアは、人間のアイデアを表現しやすいだけでなく、知恵を絞ればこの価値を自社・自国にとどめ置くことが以外と容易なのだ。これが1980年代以降のアメリカ製造業を支えてきた。インテル、アドビ、シスコシステムやクアルコムだけでなく、ほとんどすべてのICT産業も自動車産業も、そしてボーイングもソフトウェアの知財マネジメントを背後に持っていて、技術が国境を超える伝播を事業戦略としてコントロールしている。
 ヨーロッパ企業も同。世界最大の基礎研究機関であるヨーロッパのFramework Programでは組み込みソフトの基礎研究に3500億円もの資金を投入した。残念だが日本のイノベーションシステムを語る有識者にソフトウェアの重要性を強調する人はいない。・・・>申し訳ありませんが、この続きは本誌でご覧ください。

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