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野口聡氏

野口聡氏

経営者の意識変革が必要 ITで「稼ぐ力」取り戻せ

IT戦略本部にいた野口氏が7月に経産省の情報処理振興課長として戻ってきた。
今取り組んでいるのは日本再興戦略に示された「稼ぐ力」。そのための「攻めのIT投資」に企業が取り組めるよう着々と準備をすすめている。
情報法化月間特集として取り上げてみた。

経済産業省商務情報政策局情報処理振興課長
野口 聡氏に聞く

6月に日本再興戦略の改定が行われ、第1の大きな柱は日本の稼ぐ力」を取り戻す、いわゆる企業の収益力、生産性をあげて行くことにある。日本企業は欧米に比べ、生産性が低く、特にサービス業の底上げを図っていくことが重要だ。
そのためには、大胆な事業再編をし『選択と集中』を図り、将来性のある新規事業に進出したり、海外展開していくことが大事だ。
その1つに「情報化による経営革新」がある。 実際、新しい情報システムにした方が、生産性が上がるというアンケート結果も出ているので、1つのハードルは大胆に経営を変える、経営層の意識改革が必要だ。
経営層が「攻めのIT投資」に取り組み、経営革新にITを使ってほしいと思っている。アンケートによれば、今までのIT投資は業務の効率化、コスト低減など「守り」であった。それに対し、米国企業は「攻め」のIT投資を行い、新しいサービスや製品を開発したり、ビジネスモデルを大胆に変革してきている。
2つめは、日本の企業のIT部門の多くは、ビジネス革新に近づけていなかった。IT部門はシステムを安定稼働させることに特化し、企業内の利用部門からもパートナーとか、事業計画を引っ張っていってくれているイメージがほとんどなかった。
そのバックグランドとしては、米国はユーザー企業内に70%ものIT技術者がいるのに対して、日本はベンダーやSI(システムインテグレータ)企業に75%の技術者がおり、企業内には25%しかIT技術者がいないところにあるのではないか。
経済産業省として、経営者の意識を変えて「攻めのIT投資」を増やしていきたいのだが、経営者の関心事項である株式市場や投資家の評価をうまく活用したいと思っている。その良い事例として、なでしこ銘柄がある。女性の活用に積極的な企業を東証が17銘柄として指定し、昨年11月に選定基準を公表したら、企業経営者の関心が高まり、「なでしこ銘柄」に名乗りを挙げる企業が増えてきた。
このような取り組みを「攻めのIT投資」でもやっていきたい。政策の具体策としては、攻めのIT投資評価指標の策定だ。攻めのIT投資に関する客観的な評価指標を有識者委員会に策定してもらい、公表する。大企業については、IR情報に掲載し、IT投資の方向性を「攻めに」変化させていく効果が期待できる。
関連する取り組みとして、攻めのIT導入ガイドラインの策定がある。中小企業向けに、付加価値向上や取り組み手法などの導入ガイドを策定して、提示する。このガイドを参考にしてもらい、ITコ―ディネータらを通じて、中小企業の攻めのIT投資を促進していく考えだ。
中小企業の攻めのIT投資と言っても、経営課題によって千差万別である。より具体的な解決手段を分類化し、必要なIT製品・サービスを提示していきたい。例えば、売り上げの拡大・新規開拓におけるWebマーケティングとか、既存事業の転換に、業務システムの思い切ったクラウド化など、よりきめ細かく,分かり易く提示する予定だ。
現在でも、モバイル端末とクラウドプラットフォームを活用し、宿泊客の満足度向上のための接客サービスに集中した結果、売上高が4年間で60%向上した老舗旅館や、IT活用により、自社の接客サービスの問題点を把握し、最適な人材配置を実現した回転寿司チェーンなどがある。
また、中小企業の課題解決型営業に注力してきた、ある信用金庫はインターネットを使った売り上げ拡大を図りたい顧客層のために、ITコーディネータ協会と連携し、専門のITコーディネータを企業に派遣する「IT活用サポート事業」に取り組み始めた。
これからの安倍第2次内閣のミッションは「地方創成」。石破元幹事長が担当大臣となって旗を振るわけだが、地域経済の活性化のために、こうした金融機関のIT投資に対する取り組みや中小企業の活用例が役に立つのではないかと思っている。

日本は米国にくらべユーザー企業にIT技術者が少ない

日本は米国にくらべユーザー企業にIT技術者が少ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<のぐち さとし>1989年4月通商産業省(当時)入省。2007年より経済産業省商務情報政策局情報プロジェクト室長、09年より内閣官房IT(情報通信技術)担当室内閣参事官、11年より経済産業省大臣官房調査統計グループ 総合調整室長・政策調整官、12年より経済産業省関東経済産業局地域経済部長を経て、本年7月より現職。

 

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