政策と産業の最新動向を伝え、解説する“クオリティペイパー”


デザインの時代

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

工業化社会から情報社会へ、さらにサービス社会へという大きな流れの中で、われわれの価値観は感覚的、直感的になりつつある。モノをモノとしてとらえて「良いか、良くないか」という論理的な判断よりも、「好きか嫌いか」という好みの判断にシフトしている。
その中でデザインの重要性が増している。最近では、日本の電気製品が機能や性能では引けを取らなかったが、デザインの点で韓国勢に後れを取ったと言われている。日本は、狭い意味の意匠ではなく、相手国の状況に合致した広い意味でのデザインを提示することができず、結果的に好まれなかったのではないだろうか。
これからは「顧客がデザインする」という考え方も大事だと思う。「デザインされたもの」から、何らかの形で「顧客がデザインする」ことを売り物にする時代である。手軽な小物やファッション系は言うまでもないが、3Dプリンターを活用するとDIYが格段に多様化する。まだまだ時間はかかると思うが、米国では自動車まで顧客の好みに応じて「印刷する」時代を迎えつつある。
モノだけでなく、環境や街づくりもデザイン重視でなければならない。たとえば、ドバイのライトハウス・タワービル(64階建)は、上層に太陽光パネル4000枚、発電風車3機をビルトインしている。環境とエネルギー問題に対するデザイン面からの取り組みであり、日本のように休耕地に無粋な太陽光パネルを敷き詰めるのと大違いだ。
インバウンド観光は1000万人を突破したが、さらに2000万人、3000万人と増やしていくためには、交通、街づくり、宿泊、飲食、案内などの総合的なデザインが欠かせない。「訪ねるに値する国」と認識されれば、人が人を呼ぶ好循環が期待される。
このようなデザイン重視の流れをキャッチできるかどうか、換言すれば感性的価値をフォローできるかどうかに日本の将来がかかっているといっても過言ではない。
英語ではdesignという単語しかないが、日本語ではデザインと設計の二つの用語が存在する。設計は、工学面に重点が置かれ、設計図を目的とする製品に落とし込む。一方、デザインは上述のように、設計前の形状や素材の計画やマーケティングなど、より幅広い作業を指す。日本の場合は、デザイン=設計ではなく使い分けることが必要である。

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