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「組織的うつ病からの脱却」

鶴保征城 (HAL東京・大阪校長)

日本サッカーはハリルホジッチ監督になって急に元気になった。これまでは、ミスを恐れてバックパスや横へのパスが多く見られたが、先日の試合ではリスクを覚悟の上の縦パスやドリブルが功を奏した。失うものがない若手が、新しい指揮官の前で伸び伸びとプレーし、新しい展望を切り開いたように思う。
一方、日本企業はアベノミクスによる円安で少しは元気になったが、2011年ごろに藤本隆宏教授(東大)が指摘した「組織的うつ病」の状態を、まだまだ脱し切れていない。組織的うつ病は、長いデフレとそれに続くリーマンショック、東日本大震災による不況でもたらされたのであるが、
・売上、利益を重視
・数字に表れる成果のみを評価
・コンプライアンス、社内ルールで社員を縛る
・会議や稟議重視
・将来のリスクを避ける
などの現象が露わになる。
サッカーで言えば、バックパスや横パスを一見華麗に繰り返しているのに等しい。これではゴールになかなか迫れないし、得点に結びつかない。仕事柄、IT・ソフト関連企業の方々とお付き合いする機会が多いが、バックパスが得意な方をお見受けすることが増えてきたように思う。
つまり、使命感、熱意、思い、ビジョンなどよりも、リスク回避の重視だ。必然的に国内投資やR&D投資を縮小させ、付加価値の高い、魅力ある製品を生み出す土壌を破壊した。結果、天祐ともいえる円安にもかかわらずなかなか輸出が伸びない。
組織的うつ病は企業のスピード感不足に直結する。スピーディな企業は、トップがこうやると決めたら、翌日には社員全員が理解し、すぐに結果を出していくが、うつ病の企業は上が指示しても現場が動かず、また現場が納得しても、上への説明に多大な時間を要するような現象がみられる。
今、ITの潮流になっているクラウドは、このスピード感のある企業と相性が良い。ワクワクするような新サービスを考えだしても、従来は、インフラ構築がネックとなって、それなりの人・モノ・金を用意しなければならなかった。ところがクラウドのPaaSやIaaSを利用すると、ネットワーク、ハード、OSなどから解放され、新サービスのソフト構築に専念できる。経費は使用量見合いだから、投資額が合理的になる。
組織的うつ病から脱却するには、サッカーのようにリーダーを替えるのが手っ取り早い。トップは社員のコンピテンシーを把握して、これはという人物を適所に配置していかなければならない。

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